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「小説家になろう」様にて細々と活動しております、SoLaのブログです。

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【バレンタインss】ルーナ編


『そーしそーあいりょーおもい』



「せーや、チョコちょうだい」
「あん?」
 師匠からの頼まれ事をさっくりと終わらせた帰り道。並んで歩いていたルーナから袖を引っぱられてそんなことを言われた。
「なんだって?」
「だから、チョコ」
「チョコレートが食べたいのか?」
 ルーナがこくりと頷く。
「ほしい」
「そっかー」
 さっさと拠点にしているホテルに戻って報告しなければ、と思っていたが、少しくらいの寄り道なら構わないだろう。
「じゃあ、ちょっとスーパーに寄っていくか」
「ん」
 ほんの少し。
 ほんの少しだけ頬を緩めたルーナが、俺の腕を引っ張りながら先導する。そんなルーナに微笑ましさを覚えながら、俺はされるがままに行き先をホテルからスーパーへと変えた。



「どれが良いんだ?」
 ずらりと並んだチョコレートを見ながらルーナに聞く。聞きながら思い出した。今日は2月14日。バレンタインだった。そうか。バレンタインか。……バレンタインの日に俺は女の子(それも幼女)にチョコを渡すのか。
 なんかどんよりしてきた。
「んー、これ」
 ルーナが指さしたそれは、このコーナーの中でも1,2を争うほどの安さだった。
「もっと高いのでもいいんだぞ?」
 幼女が遠慮なんかするんじゃない。
「せーや、それはちがう」
 幼女が真面目な顔して俺に向き直った。
 そして言う。
「たいせつなのは、きもち」
「……お、おう」
 なんかすまん。
 幼女に大切な何かを悟らされてしまった気がする。そうだよな。大切なのは気持ちだよな。いくら俺がチョコを貰えないからって不貞腐れてちゃだめだ。
 そんなことを考えていたら、カートを押していた金髪美人のお姉さんがこちらを微笑ましい目で見てから進路を変えた。
 ……大切な何かを失った気がした。
「えーと、じゃあこれでいいんだな?」
 気を取り直してチョコを商品棚から取り出しながら聞く。
「ん」
 ルーナが頷いた。
 そして。
「わたしは、これをかう」
 俺が手にしたチョコと同じ銘柄のチョコをルーナが商品棚から取り出した。
 なぜだ。
「買ってやるぞ?」
「ん。ありがとう」
「じゃあそれは何だ」
「これは、わたしがかう」
「2個欲しいなら両方買ってやるよ。ほら」
「や」
 手を伸ばしたらすごい勢いでチョコを背中に隠された。
 なんなのいったい。
「えーと。俺はこのチョコを買うんだよな?」
「ん。ありがとう」
「このチョコはルーナが食べるんだよな?」
「たべる」
「そのチョコはルーナが買うのか?」
「かう」
「そのチョコもルーナが食べるのか?」
「ちがう。このチョコはせーやにあげる」
 ……。
 ん?
「そのチョコを俺にくれるのか?」
「ん」
 ルーナが頷く。
「ちょっと待ってくれ」
 まじで意味が分からん。バレンタイン……、とは違うよな?
「このチョコは俺が買ってルーナが食べるんだよな?」
「ん」
 これは間違っていないらしい。
「で、そのチョコはルーナが買って俺が食べるのか?」
「そう」
 これも間違っていないらしい。
 つまりどういうことだ。
「じゃあお互い自分で買って自分で食べればいいんじゃないのか?」
「それじゃだめ」
 ……。
 駄目らしい。
「ほら、いこ。せーや」
 俺の腕を引っ張り、レジへと先導するルーナ。俺はさっぱり理解できないまま、言われるがままに別々に会計を済ませた。



「はい」
 スーパーから出るなり、ルーナからルーナの買ったチョコを手渡される。
「お、おう。ありがとう」
 それを受け取りながら、俺が買ったチョコをルーナに手渡す。
「ん。ありがと、せーや」
「ど、どういたしまして?」
 疑問形である。
 当然だ。
 ここに『俺が買ったルーナが買ったチョコと同じ銘柄のチョコを手にしたルーナと、ルーナが買った俺が買ったチョコと同じ銘柄のチョコを手にした俺』という謎の図式が成立した。ごめん。自分でも何を考えているのか分からなくなってきた。
 一方、ルーナと言えばこの謎の儀式に満足したのか満面の笑みを浮かべている。
「これでそーしそーあいりょーおもい」
「なんだって?」
「んーん。なんでもない。いこ」
「お、おう?」
 ルーナに引っ張られて歩き出す。やたらと上機嫌なルーナにハテナマークを大量に浮かべつつも帰路につく俺だった。



 後から知ったのだが。
 アメリカでは、基本的に男から女性にプレゼント(ぬいぐるみやメッセージカード、花束など)を渡すのがバレンタインの風習らしい。もちろん、女性から男性にプレゼントする場合もあるようだが、『女性から男性へ』がデフォルトの日本とはやはり違う。おまけにルーナ主催の『謎の同じチョコ交換儀式』が加わったせいで勝手にバレンタインとは無関係だと考えてしまっていた。
 そして、そんな話を笑い話としてまりもにしたのが最大の失敗だった。
 不公平だなんだと大騒ぎするまりもに、少し離れた所からじっと涙目で見つめてくる栞、そして極めつけは『私はチョコを要求する』とやたらと達筆な日本語で書かれたクロッキー帳を掲げるヴェラの猛攻を受け、俺は再びスーパーへ買い出しに出る羽目になった。
 解せない。


 Fin






【謎の声】
 Web上に、3つのバレンタインssをばら撒いたぞ!!
 君は全てを見つけることができるかな?

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